「ピアサポート、創作で仲間に力を!」

舩後靖彦

皆さんはじめまして!私は千葉県に在住しております、ALS患者の・舩後靖彦(ふなごやすひこ)と申します。宜しくお願いします。本日は、テレビ電話を介してのスピーチと言う事で、皆さんには一番聴き易いのではないかと思われます、女性の声にパソコンを設定致しまして、お話しを進めさせて頂ければと思います。勿論ご覧のように私は、典型的な男性です。女性に、お間違えなきようお願い致します。ところで、画面からではお判り難いかと思いますので、念の為今の私の体の状態をご説明致します。私は先に述べましたALSと言う病気の為に、体の筋肉が萎縮してしまい両手両足どころか、体の殆んどが動きません。舌も同様に萎縮してしまい、その結果、唾も飲めず食事も取れず、喋る事も出来ません。加えて現在、自力での呼吸も出来ない状態です。でも、それでは生活、ひいて言えば命の維持が出来ませんので、息をする為に人工呼吸器をつなぎました。今ご覧頂けますように、私のベッドの左側にあります。また食事は、胃瘻より3食栄養剤のラコールを入れています。舌に触れないので味は知りませんが、ヨーグルト風味で甘いと聞いています。何か、美味しそうですね。そして今日皆さんとこうしてお話しをするのに日立の'伝の心'を、額の皺の動きを感知する、仙台の福士さんがお作りになったセンサーをマウス代わりに使用し、操作しています。そんな私はまるで見かけは、管だらけのアニメのロボットのようですが、一昨年11月にイタリア、去年3月神戸、8月岐阜、今年4月5月と愛知、そして9月には北九州へと旅行をするなど、このALS人生を謳歌しています。

ところで私は現在、『生き甲斐見せて、生き様示せ』を合言葉に、一人でも多くの方達に私の生き様を観て頂き、「人間どんな姿になろうとも、人生をエンジョイ出来る事を知って頂く」為の、ピアサポートとしてのライブ活動を、私が今住まう身体障害者療護施設の職員が中心になり結成したロックバンド、『美浜カーニバルボーイズウィズレモン』と、介護福祉士が作ったフォークデュオ『あるけー』の協力を得て、千葉、東京を中心に表現活動をしております。この二つのバンドは、全曲私の歌詞に曲を付けたオリジナル作品を演奏し、私の心の叫びを代弁してくれています。そしてそれを、福岡市のFMラジオ局、エフエムミミさんを代表として、ご協力下さるマスコミさんを介してお伝えしています。ところで、その活動の最重要要素とも言える私の歌詞等の創作、すなわち詩人活動について手短に述べたく思います。実は、この活動に着手してからまだ日が浅く、始めてから約二年半といったところでしょうか。我ながら妙にはまってしまい、既に400作品以上を書き上げました。加えて最近では、私の俳句や短歌の配信を難病患者さん等に向け、ピアサポートとして直接行なっております。これは、バンド演奏を以ってお届けする歌詞や詩の表現活動と同様、正に私のピアサポートのメイン活動とも言えるものであります。つまり、私の願いとも言える詩や俳句及び短歌を書く狙いは、ALSあるいはそれ以外の重篤な障害を持つ身ゆえ、生きる望みを失われた方達が私の作品に触れる事により、例え全身麻痺に至るALSのような病に冒されても何かが出来る事に気づかれる、あるいは自然の素晴らしさや生きる尊さを再び思い起こされる等、その方達が少しでも心癒される事のみならず、生きる事に前向きになられればとの、願いとも言える狙いから僭越ではありますが、綴り書く活動をしております。その意味では、私の全活動は相通じていると確信しております。今日、私のスピーチをお聴き下さいました方で、もし配信やライブをご希望なさいます方いらっしゃいますならば、どうかご遠慮なく舩後までご相談のご連絡を下さいませ。宜しくお願いします。ところで今日、折角の機会でありますので、私のショートエッセイ『生きてゆく』を、お聴き頂ければ幸いです。また、このスピーチの後で、『生きがいを求めて』と題する、舩後早わかり的ビデオテープをお流し致しますので、是非ご覧下さいませ。以上わたくし舩後は、身はとっくに朽ち果てておりますが、常に仲間の力となるピアサポートを意識しながら、創作や諸活動に挑戦し続ける所存です。舩後のスピーチ、『ピアサポート、創作で仲間に力を!』でした。失礼致しました。では、ショートエッセイをお聴き下さい。

◆ショートエッセイ:『生きてゆく』

『生きてゆく』とは、"挑戦者"として『人生ゲーム』を楽しむ事。

人生とは『永遠の眠り』につくまでは、ゲームの繰り返しです。これを私は、『人生ゲー ム』と呼んでいます。これに、常に勝ち続ける事はあり得ません。でも、負けたからといって、そこでグズグズしていると、瞬く間に歳を重ねてしまいます。それは実に寂しい事です。つまり、人生『死』んだも同じです。だから私は、良い事すなわち"勝ち"も、悪い事すなわち"負け"も同じに味わい、楽しめればと思っています。良い事は素直に喜び、悪い事でも次に期待する。と言う具合に、例え負けてもその場に立ち止まる事無く、次は勝つぞと前に進むのです。人生の終りがいつなのかは、誰にもわかりません。が、立ち止まれば終り、繰り返しますがすなわち『死』と同じです。『永遠の眠り』につくまでは "挑戦者"として、『人生ゲーム』を続けて行きます。そこには、『死』の付け入る隙、つまり『死』を恐れる暇などはありません。『生きてゆく』とは、そういう事だと私は思います。


今日の講演の為に、私の詩歌の師匠で"泉鏡花文学賞受賞作家"の寮美千子先生にボランティアで添削指導をお願いし、私がピアサポートの一つの手段として用いております短歌を綴りました。なげやりだった私が今井先生のご指導の元、今私が生きがいとしているピアサポートに目覚めた瞬間を詠ったものです。

【成せる事 十四首】

あの時の俺動くのは指のみで殺してくれと日々神頼み

成せる事成さねばむくろ人ならず人ならば成せ今成せる事
※むくろ=亡骸

身近なることまず手始めにしてみれば命の燠熾(おき)に炎燃えたつ
※燠熾=炭が赤くなったさま

犬のごと管につながれ生きるのは人ではないと呼吸機渋り
※呼吸機=人工呼吸器

主治医言うこのまま死ぬは勝手だが今やれる事やれ人ならと
※主治医=今井先生

時だけはうなるほどあり病得しこの身のゆえの時間贅沢

遺書に代え日々の徒然書きつけん動けぬ我のよき暇つぶし

新患に聴かせてみれば皆涙己の未来知った辛さで

同病の朋(とも)なればこそ涙より笑む顔見たしエールを綴る
※朋=友達

拙文を読む同朋(どうほう)に笑み溢れ俺に成せるはこれと火が点く
※同朋=同胞

主治医言うピアサポートが君の役雑感書くを生きがいにせよ

隣室の呼吸機の音洩れ聞こゆ健気(けなげ)に生きる人そこにあり

死を望む我に生きよと告ぐる声廊下に響く呼吸機の音

指一つ動かぬ我に生きる意味ありと覚悟を決めし日の空

成せる事成すが生きがい生きる意味延命決めて今呼吸機を

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E-mail:funa@mtd.biglobe.ne.jp


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