在宅における歯科治療 (1)

社団法人 宮城県歯科医師会
在宅歯科保険・医療・介護委員会
委員   吉中 晋
(吉中歯科医院)

歯科治療というとすぐにイメージされるのが「キーン」という高周波音や「ガガッガ」というドリルの振動、はたまた泣きじゃくる子供を押さえつけながら「痛くない・痛くない」等と見え透いた嘘を言いながら、注射をしようとする歯科医師の姿が連想されますが、実際には「どんな事がされた」とか「どういう風に修復されたりする」かは、なかなかわかりません。

そこで今回から

  1. 歯科治療全般
  2. 口腔ケア

にわけて、勉強していきたいと思います。

普段私達が治療しているのは殆どが虫歯歯周病です。それぞれには、様々な治療法がありそれらを選択して残されたはを守ったり、虫歯の進行を防いだりしているのです。虫歯は、硬組織が脱灰され引き起こされる疾患で、学校検診等で聞いた事のあるC1~C4で分類されています。

C1~C2は神経まで達していないので、あの「キーン」という(専門用語でエアータービン空気の回転数でドリルを回転させる為に、あの独特な音が発生します。)道具で虫歯となった部分を削り取ります。当たり前ですが、ここに虫歯の取り忘れや・取り残しがあると再発します。削った後には、プラスチックや金属で、失われた部分を再現します。

私達は、プラスチックをレジン充填、金属製の詰め物をインレー修復と呼んでいます。基本的には前歯や削った所が小さければレジン充填、応力が加わる可能性が大きい臼歯にはインレー修復が行われる事が多いようです。

【レジン充填】 【インレー修復】

不幸にしてC3~C4になっている場合には、残念ながら神経は取られてしまいます。又は、抜歯の対象となってしまいます。

神経を取ったままでは、その空間にまた虫歯菌が「繁殖」してしまいますので、その部位に薬をつめます。これを「根管充填」と呼びます。根管充填が終わった歯は構造的に割れやすくなるので、かぶせ物をします。これはクラウンと言われ基本的には臼歯部には金属色のものが使われています。前歯部においては、金属の部分に先程出てきたプラスチックであるレジンを貼り付けた「硬質レジン前装冠」というものが使われますが、構造的には先程の「クラウン」と変わるものではありません。これらが、俗に「差し歯」と言われている歯の様です。

上記までは、歯が保有できた場合の治療法です。

【支台歯築造】   【硬質レジン前装冠】

残念ながら抜歯となってしまった部分では、物を噛む事が出来ませんし、喋ったりする時に空気がもれてしまったりするかもしれません。又、歯は互いに寄り添ったり・咬み合ったりして力を調節してますので、抜歯された所を放置していると、隣側の歯が倒れ込んできたり反対側の咬み込む歯が見かけ上伸びてくる事になってくる為、それらに対応して用いられる治療法が「ブリッジ」と呼ばれる治療法です。

抜かれた歯の両隣を削って、前述のクラウンとクラウンの間に歯がある様にしてある治療法です。しかしながら、この治療法は抜かれた歯が2本以上であったり、抜かれた歯の後方に歯が無かったりした場合には使えません。

それらの場合に用いられる治療法は「部分床義歯」と言われるものです。

これは、部分的に用いられる入れ歯で、残っている歯に金属製のバネで口の中に保持させます。更に歯が無くなっている場合には、残念ながら「総義歯」(総入れ歯)となってしまいます。

  
  
  
【ブリッジ】    【部分床義歯】

かけ足で虫歯治療を説明してきましたが、実際臨床においてはそれぞれが組み合わされたりして行われていきます。

次に歯周病に関してですが、これは歯と歯茎の境目にある歯肉溝と呼ばれる部位に汚れが付着し石灰化がおこり、歯石となってそれらに対し、炎症反応が起こり歯肉が腫れたり膿んだりする疾患です。又、その状態を放置していくと歯を支えている骨が吸収していき歯を支えていられなくなり、歯がグラグラと動いてきたりします。この歯石がついて病的になった歯肉溝を私達は「歯周ポケット」と呼んでいます。私達が行っている治療は、この歯周ポケット内の歯石を除去する治療法です。

 

何れの場合においても、口腔内を清潔に保つ事で虫歯歯周病も予防することが可能となります。次の回では、その方法や器具を紹介していきたいと思います。


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