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第四回 コミュニケーションその1(文字盤)

コミュニケーションの支援とは

第2回、第3と呼吸のリハビリテーションや身体の関節の運動についてお伝えして参りました。ALSの症状が進行し全身の筋力が低下していきますと、呼吸や上肢の運動機能も低下していきます。そして呼吸に関わる筋力が低下すると言葉が発しにくくなり、上肢の筋力が低下すると文字を書くことが難しくなって、コミュニケーションに支障がでてきます。ここでコミュニケーションとは「おはよう」「ありがとう」といった挨拶から、日常会話や用事を頼むことなど、主に言葉を用いて他の人とやりとりすることをさしています。発音が不明瞭で何度も繰り返して話さないと伝わらない、ペンを操作する時に上手くかけず上肢に疲労を感じやすい、というのは大変もどかしい状態ですね。ALSの方は言葉や文字の理解力は保たれていらっしゃるので、伝えたいことを思うように伝えられない、ということはより一層のストレスとなるようです。コミュニケーションは送り手と受け手の両方で成り立つものですから、受け手の側も同じように聞き取りたいけど分からない、というもどかしさを感じやすくなります。そのような場合にコミュニケーションを支援する一つの方法として指文字盤と透明文字盤があります。今回はこの使い方、作り方についてお話ししていきます。

指文字盤について

発語が難しく、ペンを握って文字を書くことは難しいけど、指や手首、肘などを少し動かすことができる、そのような場合にこの指文字盤が役に立ちます。

作り方

指文字盤は50音表や単語表などを紙に書き、(もちろんパソコンで加工しても良いです。)それを段ボールや板に貼ったり、ファイルケースにはさめたりして作ります。50音表、単語表のモデルは以下のようなものです。

【50音表】
 
【単語表】
吸引 コール 文字盤
ありがとう ごはん OK
布団 車いす トイレ
痛い 苦しい 眠い
身体
寒い 暑い 分からない

初めて文字盤を作る時には事前に次のようなことが確認できていると良いです。

  • ALSの方が文字盤をさしやすい位置、角度、文字盤を指させる範囲を調べる。
  • 眼で見て確認できる文字の大きさにする。
  • 上肢を動かせる範囲が狭く、指でさせる範囲が小さい場合には、手首の動きだけで指さす ことができるように文字盤のサイズを小さくする。
  • 文字の並びは左から並べることが多いようです。上記の50音表参照ください。左からあ行、か行・・・の順に並んでいます。これは右から並べても構いません。使いやすい方でよいかと思います。(次回お伝えする予定のコミュニケーション支援機器は左から並んでいるので、左からの順に慣れておくという利点はあります。)

使い方

ALSの方が指文字盤に貼られた50音表、または単語表を指先で一文字ずつ順番にさしていき、聞き手がそれを読み取ります。(左の絵)聞き手は同じ方向から文字盤を見ると読み取りやすくなります。

慣れてきたら新たに工夫をして文字盤を作っていくとより便利になります。例えば、全身の絵の文字盤を作成すると、「痛い箇所はどこ?」の様な質問に答えやすくなります。またアルファベット、カタカナで作ることもよいです。

透明文字盤について

上肢の筋力が低下していて文字盤の使用が難しい場合、この透明文字盤が役立ちます。これは、進行しても維持されやすい眼球の動きを使ったコミュニケーション方法です。透明文字盤とは文字通り透明のアクリルボードに50音表などがかかれた板です。この文字盤をはさんで、ALSの方と聞き手が対面式に向かい合います。ALSの方は眼球を動かして、一文字ずつ選んでいき、聞き手は視線を合わせるように文字盤を動かしていき選ばれた文字を読み取っていきます。

作り方

  • 透明のアクリル板、塩ビシート(大きさはB4~A3、厚さは1mm程度)に油性マジックなどで、50音表や罫線を書く。(モデルは指文字盤と同じ)塩ビシートは文房具店、ホームセンターなどで売っています。
  • ○大きさ、文字の並び順はALSの方の使い勝手にあわせて調整することとなります。あまり大きすぎると眼球を動かす範囲が大きくなり疲れやすくなり、小さすぎると聞き手が読み取りにくくなります。紙などで双方ともに読みやすい文字の大きさを確認しておくと良いです。
  • 塩ビシートの四隅はとがっていると危険なのでヤスリなどで丸め、手に持つ部位は消えやすいので両端は少し余白の部分を作っておきます。

使い方

ALSの方、聞き手のそれぞれが姿勢に無理のないように、文字盤を挟んで向かい合います。ベッドは30度くらいが楽なようです。文字盤は20~30cmほど離し、ALSの方は伝えたい言葉の文字を見ます。聞き手は文字盤を動かして、相手の視線と文字と自分の視線が一直線上にくるようにします。文字盤はゆっくりと直線的に動かして眼球がついてきやすいようにするとよいでしょう。聞き手は見ていると思われる文字を読み上げ、ALSの方はあっているときにはYESのサインを送ります。(あらかじめYES、NOのサインを決めておくと良いです。)読み上げられた文字が異なる場合には、伝えたい文字を見続けます。聞き手はYESのサインがない場合には、文字盤の位置をまた少しずらして調整し、正しい文字を見つけます。

以下にちょっとしたコツを書いておきます。

  • 聞き手は文字の読み取りに集中して前の文字を忘れてしまうことがよくあります。慣れるまでメモをとりながらすすめるとよいでしょう。
  • 眼球を動かすことによって目も疲れてきます。ある程度まとまった時間お話しするときにはどのくらいで疲れてくるか、ということを確認しておきます。挨拶などの簡単な単語から練習を始めて、長い単語、文につなげていくと良いかと思います。
  • 利き手と同じように目にも利き目があります。見て確認しやすい方の眼球で行うとスムーズにいくこともあります。
  • 文字盤に室内灯が反射して文字が見えにくい場合には少し角度を調整すると見やすくなります。
  • 文字盤でのコミュニケーションにはどうしても時間がかかることを了解することも必要です。聞き手は焦らず、先読みせず、送り手は根気よくです。

文字盤のご利用にあたって

発語は難しいけど上肢や指は動くというときには、筆談やトーキングエイドといった機器を利用することが多いかと思います。実際に文字盤を使いはじめるときは、言葉や文字によるやりとりから別の手段へ変えていくことになるのですが、そのことに抵抗を感じられることもあるかと思います。まずその気持ちを受け止めることは大切な事です。その上で、試しに何回か使ってみられるとその便利さも感じられてくると思います。しかし文字盤では伝えられる言葉の数、相手、時間が限定されてくるため、不自由さも感じられるかもしれません。長い文章は意思伝達装置の方が有利かと思います。一方で文字盤は短く、シンプルな言葉のやりとりになるかもしれませんが、そこに込められた思いが、どんな長台詞よりも胸に迫ってくることもあります。はじめはなかなかうまくいかないこともあるかと思いますが、粘り強く続けること、うまくいった工夫を積み重ねていくことで、コミュニケーションも広がってくるものと思います。


初めて文字盤を作る時には事前に次のようなことが確認できていると良いです。

  • ALSの方が文字盤をさしやすい位置、角度、文字盤を指させる範囲を調べる。
  • 眼で見て確認できる文字の大きさにする。
  • 上肢を動かせる範囲が狭く、指でさせる範囲が小さい場合には、手首の動きだけで指さすことができるように文字盤のサイズを小さくする。
  • 文字の並びは左から並べることが多いようです。上記の50音表参照ください。左からあ行、か行・・・の順に並んでいます。これは右から並べても構いません。使いやすい方でよいかと思います。(次回お伝えする予定のコミュニケーション支援機器は左から並んでいるので、左からの順に慣れておくという利点はあります。)

使い方

ALSの方が指文字盤に貼られた50音表、または単語表を指先で一文字ずつ順番にさしていき、聞き手がそれを読み取ります。(左の絵)聞き手は同じ方向から文字盤を見ると読み取りやすくなります。

慣れてきたら新たに工夫をして文字盤を作っていくとより便利になります。例えば、全身の絵の文字盤を作成すると、「痛い箇所はどこ?」の様な質問に答えやすくなります。またアルファベット、カタカナで作ることもよいです。

透明文字盤について

上肢の筋力が低下していて文字盤の使用が難しい場合、この透明文字盤が役立ちます。これは、進行しても維持されやすい眼球の動きを使ったコミュニケーション方法です。透明文字盤とは文字通り透明のアクリルボードに50音表などがかかれた板です。この文字盤をはさんで、ALSの方と聞き手が対面式に向かい合います。ALSの方は眼球を動かして、一文字ずつ選んでいき、聞き手は視線を合わせるように文字盤を動かしていき選ばれた文字を読み取っていきます。

作り方

  • 透明のアクリル板、塩ビシート(大きさはB4~A3、厚さは1mm程度)に油性マジックなどで、50音表や罫線を書く。(モデルは指文字盤と同じ)塩ビシートは文房具店、ホームセンターなどで売っています。
  • 塩ビシートの四隅はとがっていると危険なのでヤスリなどで丸め、手に持つ部位は消えやすいので両端は少し余白の部分を作っておきます。

使い方

ALSの方、聞き手のそれぞれが姿勢に無理のないように、文字盤を挟んで向かい合います。ベッドは30度くらいが楽なようです。文字盤は20~30cmほど離し、ALSの方は伝えたい言葉の文字を見ます。聞き手は文字盤を動かして、相手の視線と文字と自分の視線が一直線上にくるようにします。文字盤はゆっくりと直線的に動かして眼球がついてきやすいようにするとよいでしょう。聞き手は見ていると思われる文字を読み上げ、ALSの方はあっているときにはYESのサインを送ります。(あらかじめYES、NOのサインを決めておくと良いです。)読み上げられた文字が異なる場合には、伝えたい文字を見続けます。聞き手はYESのサインがない場合には、文字盤の位置をまた少しずらして調整し、正しい文字を見つけます。

以下にちょっとしたコツを書いておきます。

  • 聞き手は文字の読み取りに集中して前の文字を忘れてしまうことがよくあります。慣れるまでメモをとりながらすすめるとよいでしょう。
  • 眼球を動かすことによって目も疲れてきます。ある程度まとまった時間お話しするときにはどのくらいで疲れてくるか、ということを確認しておきます。挨拶などの簡単な単語から練習を始めて、長い単語、文につなげていくと良いかと思います。
  • 利き手と同じように目にも利き目があります。見て確認しやすい方の眼球で行うとスムーズにいくこともあります。
  • 文字盤に室内灯が反射して文字が見えにくい場合には少し角度を調整すると見やすくなります。
  • 文字盤でのコミュニケーションにはどうしても時間がかかることを了解することも必要です。聞き手は焦らず、先読みせず、送り手は根気よくです。

文字盤のご利用にあたって

発語は難しいけど上肢や指は動くというときには、筆談やトーキングエイドといった機器を利用することが多いかと思います。実際に文字盤を使いはじめるときは、言葉や文字によるやりとりから別の手段へ変えていくことになるのですが、そのことに抵抗を感じられることもあるかと思います。まずその気持ちを受け止めることは大切な事です。その上で、試しに何回か使ってみられるとその便利さも感じられてくると思います。しかし文字盤では伝えられる言葉の数、相手、時間が限定されてくるため、不自由さも感じられるかもしれません。長い文章は意思伝達装置の方が有利かと思います。一方で文字盤は短く、シンプルな言葉のやりとりになるかもしれませんが、そこに込められた思いが、どんな長台詞よりも胸に迫ってくることもあります。はじめはなかなかうまくいかないこともあるかと思いますが、粘り強く続けること、うまくいった工夫を積み重ねていくことで、コミュニケーションも広がってくるものと思います。

初めて文字盤を作る時には事前に次のようなことが確認できていると良いです。

  • ALSの方が文字盤をさしやすい位置、角度、文字盤を指させる範囲を調べる。
  • 眼で見て確認できる文字の大きさにする。
  • 上肢を動かせる範囲が狭く、指でさせる範囲が小さい場合には、手首の動きだけで指さすことができるように文字盤のサイズを小さくする。
  • 文字の並びは左から並べることが多いようです。上記の50音表参照ください。左からあ行、か行・・・の順に並んでいます。これは右から並べても構いません。使いやすい方でよいかと思います。(次回お伝えする予定のコミュニケーション支援機器は左から並んでいるので、左からの順に慣れておくという利点はあります。)

使い方

ALSの方が指文字盤に貼られた50音表、または単語表を指先で一文字ずつ順番にさしていき、聞き手がそれを読み取ります。(左の絵)聞き手は同じ方向から文字盤を見ると読み取りやすくなります。

慣れてきたら新たに工夫をして文字盤を作っていくとより便利になります。例えば、全身の絵の文字盤を作成すると、「痛い箇所はどこ?」の様な質問に答えやすくなります。またアルファベット、カタカナで作ることもよいです。

透明文字盤について

上肢の筋力が低下していて文字盤の使用が難しい場合、この透明文字盤が役立ちます。これは、進行しても維持されやすい眼球の動きを使ったコミュニケーション方法です。透明文字盤とは文字通り透明のアクリルボードに50音表などがかかれた板です。この文字盤をはさんで、ALSの方と聞き手が対面式に向かい合います。ALSの方は眼球を動かして、一文字ずつ選んでいき、聞き手は視線を合わせるように文字盤を動かしていき選ばれた文字を読み取っていきます。

作り方

  • 透明のアクリル板、塩ビシート(大きさはB4~A3、厚さは1mm程度)に油性マジックなどで、50音表や罫線を書く。(モデルは指文字盤と同じ)塩ビシートは文房具店、ホームセンターなどで売っています。
  • ○大きさ、文字の並び順はALSの方の使い勝手にあわせて調整することとなります。あまり大きすぎると眼球を動かす範囲が大きくなり疲れやすくなり、小さすぎると聞き手が読み取りにくくなります。紙などで双方ともに読みやすい文字の大きさを確認しておくと良いです。
  • 塩ビシートの四隅はとがっていると危険なのでヤスリなどで丸め、手に持つ部位は消えやすいので両端は少し余白の部分を作っておきます。

使い方

ALSの方、聞き手のそれぞれが姿勢に無理のないように、文字盤を挟んで向かい合います。ベッドは30度くらいが楽なようです。文字盤は20~30cmほど離し、ALSの方は伝えたい言葉の文字を見ます。聞き手は文字盤を動かして、相手の視線と文字と自分の視線が一直線上にくるようにします。文字盤はゆっくりと直線的に動かして眼球がついてきやすいようにするとよいでしょう。聞き手は見ていると思われる文字を読み上げ、ALSの方はあっているときにはYESのサインを送ります。(あらかじめYES、NOのサインを決めておくと良いです。)読み上げられた文字が異なる場合には、伝えたい文字を見続けます。聞き手はYESのサインがない場合には、文字盤の位置をまた少しずらして調整し、正しい文字を見つけます。

以下にちょっとしたコツを書いておきます。

  • 聞き手は文字の読み取りに集中して前の文字を忘れてしまうことがよくあります。慣れるまでメモをとりながらすすめるとよいでしょう。
  • 眼球を動かすことによって目も疲れてきます。ある程度まとまった時間お話しするときにはどのくらいで疲れてくるか、ということを確認しておきます。挨拶などの簡単な単語から練習を始めて、長い単語、文につなげていくと良いかと思います。
  • 利き手と同じように目にも利き目があります。見て確認しやすい方の眼球で行うとスムーズにいくこともあります。
  • 文字盤に室内灯が反射して文字が見えにくい場合には少し角度を調整すると見やすくなります。
  • 文字盤でのコミュニケーションにはどうしても時間がかかることを了解することも必要です。聞き手は焦らず、先読みせず、送り手は根気よくです。

文字盤のご利用にあたって

発語は難しいけど上肢や指は動くというときには、筆談やトーキングエイドといった機器を利用することが多いかと思います。実際に文字盤を使いはじめるときは、言葉や文字によるやりとりから別の手段へ変えていくことになるのですが、そのことに抵抗を感じられることもあるかと思います。まずその気持ちを受け止めることは大切な事です。その上で、試しに何回か使ってみられるとその便利さも感じられてくると思います。しかし文字盤では伝えられる言葉の数、相手、時間が限定されてくるため、不自由さも感じられるかもしれません。長い文章は意思伝達装置の方が有利かと思います。一方で文字盤は短く、シンプルな言葉のやりとりになるかもしれませんが、そこに込められた思いが、どんな長台詞よりも胸に迫ってくることもあります。はじめはなかなかうまくいかないこともあるかと思いますが、粘り強く続けること、うまくいった工夫を積み重ねていくことで、コミュニケーションも広がってくるものと思います。

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第五回 意思伝達装置の導入について

はじめに

 今回は、意思伝達装置についてお話しします.とはいっても、装置の種類や操作方法は、インターネットで「意思伝達装置」で検索していただくと、もの凄い量の情報を得ることができますし、皆さん方もパソコン関係については詳しいと思います.しかも、宮城県には意思伝達装置の「神様」坂爪新一先生という方がおられます.頼もしいかぎりです.ということで、具体的な装置の説明は控えさせていただいて、今回は、わたくし(編注:仙台医療センター附属リハビリテーション学院 作業療法士吉田前氏)の意思伝達装置「導入」の経験をお話しをさせてもらいます。

忍耐強い精神

わたくしは仙台に来るまで、北海道の旭川市(旭山動物園で有名ですね。その動物園のアザラシ館に私の描いたアザラシの絵が展示されていますよー)で難病の患者さんの作業療法の訓練をしてきました。そこでは、病室で患者さんの毎日使用する、機器やスイッチなどの改造、改良もしてきました.意思伝達装置のパソコンのスイッチなどの改造も経験してきました。が、パソコンのハード面にはからっきし無知なので(いまだに)、ハード面は業者さん(北海道では、「北海道難病連」という、難病の方々の補装具から制度までに至るまで、とっても詳しい頼りになる法人があります)にほとんどまかっせきりで、パソコンの機能が増えるたびに「おー!」、「なるほどねー」、「すんごいねー」なんて、患者さんと一緒に感動しているばかりでした.そこで毎回感じることは、ALSの方々は、意志がはっきりしていて、本人が満足して「OK!」がでるまで何回でもチャレンジするということに感心してました。数ミリのズレでも使いにくかったらダメだしが返ってきます。ALSの患者さんは自分の使いやすいように好きなように設置や設定ができないので、神経質的になるのは当たり前です.改良者も使いやすくなるまで何度でも調整するという態度が必要です。ということでALSの方々は、妥協して(気を遣って?)やっぱり使えんかったわとか、パソコンが病室のオブジェになっているということがあんまりありませんでした。

導入の失敗経験

パソコンを使って意志を、気持ちを伝えるということに、最初は大抵の患者さんは抵抗を覚えます。それは、パソコンを使ってみますか、と言った瞬間の顔の表情や返事が暗くなったり硬直することですぐに分かります。当然のことですが、言葉でなく機械を介して会話するなんてまさか!という気持ちになるのは当たり前です。でも、大抵の患者さんはやってみると、なかなか良いもんじゃないか、と感じてくれて表情も明るくなります。そんな中でも導入してからの、失敗体験としてはたくさんたくさんあります。大きな失敗のひとつは、装置の操作の仕方がはっきりしないまま指導したことです。新しい機器を患者さんが購入したので、ベッドサイドにおいて、さあ、やるか!とふたりで意気込んだのは良いのですが、説明書もみないまま取り組んだため、とっても時間がかかり患者さんに呆れられたことがありました。操作前には事前のチェックは十分にしましょう。信用第一ですね。別な件では、わたくし自身、機器の改良に疲れ果てて「これでいいんじゃないですか」、と言ってしまったことがあります。患者さんは少しでも過ごしやすい生活環境を期待しているのに、わたくしの方が妥協してしまったという、とっても情けない、いやーな療法士になってしまいました。改良者の忍耐強さが必要です。その他、設置したあとのメンテナンスをおこたったこと、患者さんのあきらめに果敢に努力して使いこなせられなかったこと、などなど思い返せば恥ずかしいやら、悔いが残ることやらでいっぱいです。

導入にとって大切なこと

ALSの方は顔の筋力低下によって表情が出しにくいので、何をしてもらいたいかすぐわかる工夫(一番よろしいのは♪目と目で通じ合う♪、といことでしょうが。付き合いの短い人や意思伝達の受信能力の弱い人は「目」では難しいようですね)も必要です。それには、スイッチ一つで意思表示ができる、操作しやすいスイッチなど、「簡単な」ということが必要条件です.と、書くこと自体も簡単ですが、それには何日もの患者さんとの忍耐強い話し合い(これがかなり時間がかかるのです)と何十回という機器の改良が必要です。そして、たとえ上手くいっても、決して改良に携わった者の自己満足で終わってしまってはいけません.身体の機能低下ですぐに操作が難しくなるし、日々の姿勢の変化や体位の違いで、操作ができたりできなかったりすることもあるので、そのあとのフォローやメンテナンスもとっても必要です。

意思伝達装置をうまく使いこなせる患者さんというのは、機器に詳しいとか、根気があるとか、体力があるとか、残存機能がたくさんあることも重要な要素ですが、周囲の方々の忍耐と努力と協力、それに愛情も不可欠だと思っています。機器に詳しくても、根気があっても、体力があっても、気持ちを伝えたい人、誉めてくれる人、励ましてくれる人、愛を与えてくれる人が必要です。とにもかくにも、ALSの方々は忍耐強いですので、それに付いて行くような姿勢が大切ですね。それに加え、根気強い操作の指導も必要です。

自分の内面を見つめるとか、過去を振り返る、という誰でもが持ちうる自閉的な気持ちも大切にしていただきたいと思っています。それは、パソコンを通じて、将来のことについての想いや日頃の気持ちを文章で残したい、日記をつけたい、というかたちで難病の患者さんによく見られます。ところが、病室での患者さんがパソコンを操作していると、看護師さんや掃除のおばさんに遠慮もなく「なにやってんのぉー?」ってパソコン画面をのぞかれて、やる気をなくしたという難病の方も数多くおりました。すぐに画面を切り替えるという操作ができればいいのですが、むやみにのぞき込むのは止めてほしいものです。意思伝達装置はまさにその人の「心」ですから。

導入して使いこなせるまでに大切なのは、本人のモチベーションの持ち方と、使いやすいと感じてもらえること、楽しいと感じること、周りの人の忍耐、時によりプライバシーの確保が必要です。

最近の動向

これから意思伝達装置を導入しようとしている方は、パソコン本体自体は補装具として、自治体に申請できるようになりました。これは、各市町村(編注:仙台市ならこちら)に聞いてみましょう。自分で好きな機種を買って、自分で使いやすいように組み立てるというのも選択肢の一つです。また、進行に応じて、あるいは先を見越した使いやすいスイッチを選ぶことも大切です。スイッチといっても市販されているものは高価なものばかりで、ちょっと手が出せない感じですよね。使いやすく、お手軽な素材で廉価に作れるようなアイディアを作業療法士はたくさん持っています。とはいっても、患者さんや家族の方々との話し合いでアイディアも生まれてくるんですけどね。家族の方々のアイディアや観察力にはとってもかないません。例えば、機能が低下してきて動くところが少なくなってきても、「足の親指は動きますよ」とか「頸を右側にちょっと動かすことができるんですよ」など日頃見つけることのできなかった動きを教えてもらって、スイッチを考えることができるということが、多くありました。一番わたくしの自信作は、額にできるしわで操作できるスイッチを作ったことでした。センサーを使わないで、最初から最後まで手作りでした。でも、二度と作れないでしょう。まず困ったら知り合いの作業療法士に相談してみてください。それから、脳波や脳血流で反応するスイッチも、最近は操作しやすいように開発されているそうです。

パソコンの世代は変わっても

ワープロ程度にしかパソコンを使いこなせなくて、最新のパソコンの情報についても疎い患者さんやその周囲の方は、意思伝達装置など使うなどとんでもない、なんて思うかもしれません。でも、自分の周りを見渡すと、あの人もこの人もパソコン通(オタクだったのというひともいるかも)だった、ということに気づかされることがあります。一人でできなければ、人を使いましょう。それも「意思伝達」の足がかりです。現在、パソコンが月単位でどんどん開発されていますが、意思伝達の基本はどの「世代」でも同じだと思っています.人と人とのつながりが一番大切なのです。身体は動かなくとも、意志を伝えようと頑張っているALSの方の気持ちを分かるには、何十人ときには百人以上の協力が必要です。一人の患者さんがもたらす人と人との巡り合わせというものには、計り知れないものがあります。わたくしもALSの患者さんによって、いろんな方々と知り合うことができました。とっても感謝の気持ちでいっぱいです。これからも作業療法士という立場ばかりではなく、ALSの方々の「個性」を生かしていけるよう、個性のある個人としても協力していきたいと思っています。

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第六回(最終回) 筋萎縮側索硬化症(ALS)の方の食事について

はじめに

私たちにとって食事は、炭水化物・脂肪・たんぱく質・ビタミンなどの栄養素と水分を十分に摂ることで生命を維持することとして重要なばかりではなく、家族との食事や友人との会食を通しての楽しみやコミュニケーションなど社会的交流としても大変重要な作業と言えます。

ALSの方の場合、食事に関する次のような生活機能の支障が考えられます。

第1には、のみ込む働きそのものが悪くなること(球麻痺による嚥下障害といいます)です。その症状としては、食事に時間がかかって疲れたり、食べ物が気管に入ってむせて苦しむ(誤嚥といいます)ようになったりします。そのために食事の楽しみは失われ、逆に食事を嫌がるようになり、その結果、十分な量の食べ物や水分を摂ることができなくなります。

第2には、手や腕の力が弱くなるためにすぐに疲れてしまい、十分な量の食べ物や水分を口に運べなくなります。

第3には、手足の力が弱くなって用便に介助が必要になると、トイレの回数を減らそうとして飲む水分量を意識的に減らしてしまいます。飲みたい気持ちを我慢することになり、その結果、必要な水分量が不足することになってしまいます。

今回は、ALSの方にとって困難になる食事について、誤嚥を防ぐ食事の方法や食べ物の形態を工夫する方法などについてお話したいと思います。

食事の時の姿勢について

まず食事は、安全に食べることが最も重要なことです。そのために食べるための姿勢が大切になります。椅子や車椅子などに座って食べたり、座れない方はベッド上でよいので、上体を30度程度ギャッジアップして起こし、頭の下に枕を入れて頭が少し持ち上がるよう(あごを少し引き気味にする姿勢)にして食べるようにするとよいでしょう。しかし上体を起こしたままの姿勢が苦しい場合は、飲み込みやすい姿勢(横になったままでなど)で食べる方法でも良いようです。ただしいずれの姿勢でも、食べた後は、胃からの逆流を防止するために、できれば1時間以上座位を保たせることが必要です。これだけでも誤嚥性肺炎の予防に効果があります。

次に食べ方ですが、一度に口に入れる食べ物や汁物は少なくし、固形物と汁物を交互にとることが大切です。また、口に取り込んだ後は、あごを引いて「ゴクン」と飲み込むと「むせ」が少なくなります。起きて座れない方はベッド上でよいので、上体を30度程度ギャッジアップして起こし、頭の下に枕を入れて頭が少し持ち上がるよう(あごを少し引き気味にする姿勢)にして食べるようにするとよいでしょう。一回の食事に時間がかかって苦痛な場合もあることと思います。その場合は、食事回数を増やして一回の食事量を減らすのも良い方法です。

介助が必要な方の場合は、食べる機能を介助するだけではなく、食べることを共有するように正面から、一口サイズずつ食べ物を口に入れることが大事です。比較的小さめなスプーンを用い、ご本人が口の中で噛み切らなくても良い口に収まる量を入れるのが適量です。うどんなども一本か二本ずつ口に運ぶようにします。その都度「ゴクン」という飲み込みを確認し、次の一口を進めてください。また、固形物とみそ汁などの汁物を同時に口に入れないようにします。汁物はそのまま気管に入りやすく、誤嚥しやすいため、介助者はスプーンを傾けて流し込むのではなく、ご本人がスプーンから吸い込むように口に摂り込んで下さい。また、熱いものをそのまま口に入れないように注意が必要です。

食事の道具について

ALSの方は、全身の筋力が低下するという症状があります。食事においても腕や指の力が入りにくい、だんだん疲れてくるなどの症状が食事動作に直結する問題になりやすいです。一食を完食するためには、箸やスプーンといった道具を握ったまま、腕の上げ下げ、肘を曲げ伸ばしなど思いのほか腕の力を要するものです。そこで工夫できることは、道具の重さ、握りやすさ、操作性です。一般的には、軽い素材でできているものがよいようです。また指の力が弱くなってくると握りこみができなくなってきますので、道具の柄の部分を太めのものを選ぶ、スポンジなどをかぶせるなどの工夫が良いようです。

腕の全体の力が弱くなってくるために口まで運びにくくなることもあります。その場合は、スプーンなどの柄の少し長くなっているものを選ぶことや、使用するテーブルの高さを高めにして、腕を動かす距離を短くするなどの工夫も有効になります。

食べ物の形態について

最も良いのは柔らかくて水気があり、かつ滑らかな食べ物です。肉や果物はすりつぶしてピューレ状にして柔らかくします。パンのようなパサついたものはミルクやスープなどの液体の食品に浸して食べるようにすると良いようです。以外に思うかもしれませんが、「さらさらした液体」よりも、「とろみのある液体」の方が飲み込みやすいものです。例えば、すり潰したジャガイモを加えるなどして汁物には「とろみ」を持たせるのも良いでしょう。澱粉などを主原料とした嚥下補助食品(商品名「トロメリン」「トロミアップ」「スルーソフト」「エンガード」)が市販されています。日常的に利用するのもよいでしょう。

液体は室温のままよりも、冷やした方が飲みやすくなるようです。

さいごに

ALSが進行することで嚥下障害が進行していきます。そのため口から食事を摂取することが困難になることから、良好な栄養状態を保つために栄養チューブを腹壁から直接胃に入れる「胃瘻」を増設する必要があります。ALSの症状として筋肉が衰え、痩せてゆく経過と共に精神面からの食欲不振、嚥下障害の進行により食事を摂取する作業が安全にまたうまくできずに1、2ヶ月の間に急激に衰弱してしまうこともあります。その対処的手段としての医学的方法です。栄養チューブから通す食事は、家人が毎日食べているものをミキサーで水様物にして注入するのがすすめられるようです。ただし、トマトの種などでチューブをふさいでしまうもの等は危険ですので、注意と工夫が必要です。医師の適切な処置と判断を基本とした上で、ご本人、ご家族の正しい知識と介護者による日々の適切で安全な管理をする事で対処できる方法であり、様々な方法により、栄養摂取が可能になります。

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